メンタルトレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト、前回から3Sのメンタルトレーニングをお伝えしていますが、今回のテーマは2つ目のS,「したたかな心」です。

池越えの160ヤードのパー3。グリーンの周りはバンカーで囲まれています。こんな状況では、多くのゴルファーが多かれ少なかれ緊張感を覚えると思います。

ここで、何とか池だけを越えようと思って打ったが、ダフったりして池に入れてしまったという経験は誰しもお持ちだと思います。一方で、上手くいくときもあります。その違いは何でしょうか。

いろいろな理由があるのですが、2つ以上の禁止をすると、ほとんどの場合、上手くいきません。2つの以上の禁止とは、池には入れたくない、そしてバンカーにも入れたくないという2つです。その上、グリーンの奥には行きたくない、ダフりたくないといった多くの禁止を課せば課すほど、スイングはぎこちなくなります。

困難な局面では、いかに禁止令を減らすかが、大事になります。そのために、お勧めするのは、嫌なものを利用するということです。先ほどの場面で嫌なものとは、例えばバンカーです。バンカーに入れようと思って打つと、池を避けて打つよりも楽に打てます。

実は「嫌なもの」とは、「心惹かれているもの」ともいえます。恋愛もそうですが人は一度心惹かれると、それを外すことはなかなか難しい。池に入れないことを目標にしても、すでに池に心惹かれているので、心は池から離れません。入れたくない、入れたくないと心で唱えるほどなぜか池に入る理由がそこにあります。そこで、もう一つの嫌なものを利用するのです。バンカーに意識をむけて、バンカーに入れようと思うと、池への意識が緩みます。困難な局面では、どれだけ身体がスムーズに動くかが勝負です。禁止令を連発するのではなく、嫌なものは嫌なもので相殺することで、身体は別の心惹かれるモノにむかってスイングしてくれます。この心の法則をメンタルトレーニングで活用するのです。

本当はグリーンに乗れば一番いいと思います。ただ、先ほどの場面でグリーンに乗せようとして禁止令が増えると、逆効果になります。最高を求めて、最悪の結果になるのです。なので、嫌なイメージが湧いている場面では、いかにワーストを避けるかが大事になります。禁止令を減らすことに焦点を当てることで、最悪の結果は避けられます。

禅の師匠から「禅は負けて、参ったすること」と教わりました。どんなに頑張っても大自然の摂理にはかないません。坐禅でも自らのはかない存在に気づき、無駄にあがくことを止めることで、力みが減って呼吸が軽くなったように感じます。

何かをなし遂げるためには、したたかさが必要です。したたかさとはさまざまな知恵の引き出しを持ち、それをどう使うか。まずは素直に負けを認めて、参ったすることです。負けることから、どうベターなプレーをしていくかという視点が生まれます。