メンタルトレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト、今週のテーマは「2つの許可」です。
皆さんは、ゴルフのラウンド中、思考と身体が上手く協力出来ていますか。思考が批判や攻撃をしていると、全体の動きがバラバラになり上手くいきません。その尺度は、「ショットを味わえているか。」
ショットを味わうメンタルトレーニングにおいては、脳と身体の働きをどう上手く組み合わせるかが鍵になりますが、まずは脳の働きの特徴を知っておく必要があります。脳には主に「思考」と「感じる」という2つの機能があります。「思考」しているときの身体の状態と、五感を使って「感じている」ときの身体の状態は明らかに違います。
ショットの前にはどう攻めるか、マネジメントすると思います。これは思考の働き。しかし、ルーティンに入っても思考が働いていると身体はスムースに動きません。そして、分かってはいてもなかなか考えることを止められないものです。
いかに思考を減らせるか。
今回は「2つの許可」というメンタルトレーニングのメソッドをお伝えします。まずは、一つ目の許可。ルーティンに入るときに、「あとは身体に任せるよ」と許可を出しましょう。心の中で許可を唱えるのです。身体が自由に動くには、思考の許可が必要なのです。思考の許可がないままでは、身体は萎縮したままです。
これは、子供のとき親や先生に叱られないように、顔色をうかがいながらやっているような感覚。叱られないようにという意識は、緊張をもたらします。
思考は禁止することが得意です。失敗しないように、迷惑をかけないようにと理性でストップをかける。社会で生きる上では大切な働きです。
一方で、禁止は身体の感覚を奪うのです。少し話は脱線しますがたとえば、ご飯を食べるときに、太るから食べ過ぎないようにと禁止令を出していませんか。実はこれだと身体が緊張して味わうことが出来ていません。食べる前には、「食べていいよ」という許可が大事。許可を出すことでお腹の緊張が緩み五感が働き出すので、香りや触感、味が鮮明になってきます。まさに、お腹の声が聞こえてくるのです。実は食べる量ではなく、味わいがないから飢餓感、欠乏感が消えないのです。
ショットは食事で同じように「味わう」ということが大事。そのために、「身体に任せるよ」と許可を出しましょう。
そして、もう2つ目の許可はショットが終わった後です。もし身体に任せて失敗したとしても、批判しないこと。このとき、批判すると次にプレーするときに萎縮してしまいます。どんな結果になっても、「OK!!お疲れさま」「頑張った!」とまず優しく声をかけてあげましょう。どんな結果でも許可を出すことで、最後まで味わうことができます。これで、一つのプレーが完了するのです。打った後にすぐに否定してしまうと、身体に恐怖を与えます。この恐怖は少しずつトラウマとなって蓄積されていきます。それが次に挑戦するときにフラッシュバックしたり、躊躇をもたらします。
まず許可をだしてプレーする。そして、プレーした後も許可を出す。これが思考を敵に回すのではなく、味方にする方法です。思考は皆さんが失敗することを心配してくれている母親のような存在。思考に「心配してくれてありがとう」と感謝するのも有効な声掛けです。