スポーツでも仕事でも行き詰まることがあります。

ここ一番で緊張してしまう。
結果を意識した瞬間に固くなってしまう。
ミスをひきずる。
やる気が上がらない。
集中力が続かない。

いろいろ競技の選手達とメンタルトレーニングをする中で分かってきたことは、薄々は枠の存在に気づいていながらも、何が枠になっていないのか分からないのです。

誤解がないように申し上げておくと、枠があって当然ですし、悪いわけではありません。

ただ、枠に縛られてしまうと、自分らしいプレーをすることが出来ません。

そして、枠は見えません。

見えない枠とどう付き合っていくのか。

そのために、選手達といろいろなトレーニングい取り組みますが、もし何かに行き詰まっているとすれば、全否定することをオススメします。

コーチングの世界では、「肯定」することが大事とされていますし、私もその通りだと思います。でも、「肯定」だけでは乗り越えられない壁があります。

全否定の一つとして、一度今までのやり方を壊してみるのです。グチャグチャにしてみるのです。

枠とはいわば、固定概念という見えない枠。あるときまでは、とても有効に働いてくれている固定概念も、どこかで自分を縛り始めるときがくるのです。

ゴルフでいえば、スコアアップを目指すから燃えます。しかし、どこかで結果に囚われはじめると、自分らしいプレーが出来なくなります。そういうときは、結果を全否定することからはじめる。スコアをつけずラウンドをすることで、あなたのゴルフをもう一度作り直すのです。

ぶち壊すのは怖いです。でも、壊すことをどこかで求めている自分もいます。

それは、ガチガチになった固定概念という枠を壊すことを本能的に求めているから。

不思議なことに、一度グチャグチャになってみると、余分な力みが抜けていきます。呪縛が解けて心や身体に新たな風が吹き込んできたと表現したアスリートもいました。

ちなみに円は360度。行き詰まっている多くの人達が、半分くらいまではいくのですが、途中で引き返してしまうのです。いかに一周できるか。そのためには、180度を超えて真っ逆さまに落ちるような感覚を味わう必要があるのです。

逆にいうと、真っ逆さまに落ちているような恐怖を感じているときこそ、180度を超えて、360度に向けて進んでいる状態。

やがて、この全否定は全肯定へとつながっていきます。それは遠いどこか新たな場所にたどり着くのではありません。実は元の場所、原点に戻っているのです。

しかし、全否定を通った新たな原点は、恐らく新たな原点に生まれ変わっていると思います。この固定概念という枠は壊してもまた新たな枠になっていきます。何回でも枠を壊せるかが、仕事でもスポーツでも長く活躍し続けるために必要な鍵になるのです。

週刊ゴルフダイジェスト第41号、メンタルトレーニングのコラム「禅の境地へ」第132回のテーマは「見えざる固定概念の壁」です。

ご興味のある方は、ぜひ読んで見てくださいね。