物事を速くスピーディに行うこと、
これはビジネスではとても大切なこととされています。

私も会社員になったとき、
「業務のスピード、効率、正確性」についてはかなり指導されました。

普段、香川で生活している私からすると、
東京に行くと、駅を歩くサラリーマンの歩く速度が ワンテンポ速いのです。
そして少しでも迷うと流れに乗り損ねてぶつかったりしてしまい、
東京のビジネスのスピード感を感じます。

ただ、速ければそれでよいのでしょうか?

経営者のBさんは、なんでも速いのが特徴の方でした。

・食べるのが速い
・決断が速い
・レスポンスが速い
・話すのが速い
・歩くのが速い

この速さがビジネスでは 決断力や行動力となって、
会社を引っ張る原動力になっていました。
スピード感あふれる経営でもちろん会社も成長していました。

しかし、一方でうまくいかないことも増えていたのです。

物事が速く進まないとイライラするのです。
そしてどうもこの「速さ」がさまざまなあつれきを生じていることが
コーチングで分かってきました。

・他の人の仕事が遅いと、自分がやってしまう
・結論を急ぎ過ぎて、部下のやる気をそいでしまう
・自分が何かをすぐに理解できないことがあると、
 自分にもすごくイライラしてくる
・家族と旅行にいっていても、運転が遅い人がいると急にイライラしてきて
 せっかくの旅行が台無しになったことも

自分でも無意識のうちに速すぎるようになっていたのです。

元来、速いのが好きなので楽しめているうちはよかったのですが、
いつの間にか速すぎることが、楽しさを奪っていたのです。

部下との時間も以前は楽しい時間でしたが、
いつの間にか部下から相談を受けていても
携帯電話が手から離せず、話が中断することもしばしば。
そんな社長に対して部下の気持ちも離れていました。

Bさんとのコーチングの中で、
以前は速くするのが好きだったのが、
今は「速くしないといけない」と変化していたことが分かりました。

特に自分が不安になったときに
焦って速すぎる傾向が出てくることも分かりました。

速すぎることで余裕がなくなっていたのです。

このころには、何をやっても楽しさが あまりなくなっていました。

以前は本を読むのが楽しみでしたが、
分厚い時間がかかる本は読みたくなくなっていました。
いかに短時間で多く読むか、「今月は20冊読んだよ」と自慢にしていました。
でも何も心に残らないのです。

Bさんはまず「速すぎる」スイッチに気をつけるようにしました。
すると一日のうち20回以上スイッチが入っていたことが分かったのです。
そしてスイッチが入ると、楽しいと思っていたことが
色あせていくことも分かりました。

何かするにも「速くしないと」というスイッチが入ってしまうことで
結果を求めすぎたり、 時間を焦ったり、同時にいくつものことをしようとして
余裕をなくしていたサインだったのです。

「かなり生き急いでいましたね。」

Bさんからある日、こんな言葉が出てきました。
今では、焦った時ほど 自分にじっくりと言い聞かせて
時間をかけるようにしているそうです。

その方が余裕も出て、人の話もじっくり聞けるし
深みのある答えも出るし、なによりも楽しさが増したそうです。

スピードは確かに大切ですし、
ビジネスを成功させるポイントでもあります。

私が駆け出しの頃、師匠から頼まれたことを3日間返事せずにいました。
すると「あの件はどうなったんだ。僕と付き合う場合は
24時間以内に 必ずレスポンスするように」と注意されました。

私としてはじっくり考えて よい答えをしようと保留にしていたので、
なんで分かってくれないんだと、当時は正直まったく納得できませんでした。

でも時間をかけて、よい答えをだそうとすればするほど
返事ができなくなるのです。
苦しくなってくるのです。

それよりも「考え中です」でもよいので、まずすぐに返事を出す。
そうすることによって相手にも安心感を与えられますし
自分も楽になることを知りました。

こだわりすぎても駄目ですね。
今では、同じことを後輩にも伝えています。

ポイントは速い、遅いではなく、自分も相手も楽なペースを掴むこと。
すると、 楽しさが増してくるのではないでしょうか?

みなさんは生き急いでいませんか?