前半はアイアンが絶好調で最高のスタートを切ったのに、後半に入った途端、ショットが寄らなくなり、またここぞというパターも入らなくなる。一日のラウンドの中でも、上手くいくときと何をやっても悪い方向にいくときがあります。

禅では「無常」という真理があります。どんなに調子が良くても、いい時は長くは続きません。一方で悪いときも必ずありますが、これも長くは続きません。再びいいときはやってきます。「無常」は当たり前のように思われるかもしれません。しかし、いい時はずっと続いてほしいと願いますし、悪い時はやってきてほしくないと思ってしまうのが人情です。

その日、満足できるスコアで上がれるかどうかは、実はいいショットをどれだけ打つかよりも、悪い時にどれだけ耐えられるかがポイントになります。ミスした後にアプローチで寄せられるか、2メートルのパットをねじ込めるかどうか。ここで我慢できていると、ある時流れが変わる瞬間があります。次のホールでピンそばについたり、アプローチがカップに吸い込まれたり・・・

欧米の世界ランク上位のトッププロたちもドライバーを曲げたり、セカンドショットを大きくオーバーしたり、いろいろなミスをしています。しかし、そこから奇跡的にも見えるアプローチや長いパターをねじこんで、なんとかパーを拾うのです。

人は失敗するのが苦手です。だから、失敗しない練習、例えばいいショットを打つことに偏りがちです。しかし、必ず失敗は起こります。だから、いいスコアを出すには、失敗した時の練習をする必要があるのですが、ここ一番で崩れてしまうプロやアマチュアは、立て直す練習が得意ではありません。

特に日本人は小さいころからの教育の影響で、いいショットを打たなければという意識が強いのではないでしょうか。いいショットを打とうする気持ちが強くなりすぎると、少しでも悪いと負のエネルギーが発生します。無意識に失敗を恐れるようになり、守りのプレーに入らせます。それではせっかくのいいショットが生かせません。

いいショットは強い心がなくても打てます。しかし、リカバリーは強い心がなくてはできません。それは、ミスを100%受け入れる心、状況を冷静に分析する力、決めきって信じきる力、すべての人間力を次の一打に動員する必要があるからです。

そこで、お勧めするメンタルトレーニングは、失敗した時に自分を立て直す練習です。短いパットを外した、池に入れたなど困難が訪れたときに、スコアカードにチェックマークを入れてください。そして、立て直せたときには〇、立て直そうと努力したが上手くいかなかったときは△、立て直すことを忘れていた時には×をつけてみて下さい。

こうやってメンタルトレーニングをしていると、立て直す力が少しずつついてきます。失敗を恐れるのではなく、困難こそが、次へのチャンスへとつながっていくことに気づき始めます。失敗を乗り越えることで何よりも、「自分を信じられる」ようになる「心幹力」がつくのです。ぜひ取り入れてみてください。