言葉が多い時には決断しない

現在発売されている週刊ゴルフダイジェストで、メンタルトレーニングを特集していただきました。テーマは「言葉の効力」です。今回のメルマガでは内容を掘り下げてみたいと思います。

スポーツでもビジネスでも、言葉とどう付き合うかは、パフォーマンスに直結します。

悩んでいる時、人は言葉が多くなる傾向があります。セッションでクライアントさんにお話を聞きはじめると、堰を切ったように話されます。不安や心配、あるいは正解を探したり…と思考が溜まっているのです。

こういう時に無理に焦って解決しようとすると、あまり良い方向には向かいません。言葉が多い時の態度としては、「待つ」ことが肝要です。

そして、しばらく間を置いていると、だんだん言葉は減っていきます。脳はずっと話し続けることはできません。どこかで疲れて、考えることをやめるのです。そういうとき、思ってみなかったアイディアが出てきたりします。あるいは、人の意見を素直に聞けたりします。

言葉が減ってきた時、何か決断したり、行動にうつすタイミングと言えるでしょう。

「浮かんでくる言葉」と「考えている言葉」の違い

以前のメルマガでもお伝えしましたが、そもそも言葉には大きく分けて2つあります。

一つは、浮かんでくる言葉です。人間は放っておいても、自然に言葉が浮かんできます。過去の失敗が浮かんできたり、未来の結果への期待が浮かんできたり。これは、避けることはできませんし、コントロールすることもできません。

人は浮かんでくる言葉によって、楽しくなったり、動揺したり、緊張が襲ってきたりします。大事なことは、その瞬間に、過剰に反応しないことです。

もう一つの言葉は、考えている言葉です。浮かんできた言葉について反応し、掘り下げて考えたくなるのです。理由や原因を考えて、納得しようとするのです。

考えるのが悪いわけではありません。しかし、考えることで言葉を掴んでしまうと、これがやがて「執着」になります。

執着というのは、何かに固執したり、欲することだと思いがちですが、そもそもの原点は「言葉への執着」なのです。

なので、執着しているとき、ムキになっているときというのは、「言葉を流す」という訓練をするといいです。

「ああ、こんな言葉が浮かんでいるなあ」と気づいてあげるだけで、「考える」という力みは抜けていきます。そして、言葉は消えていきます。

「考える」から「やってくる言葉に気づく」モードに切り替えるのです。

スポーツ選手や、ビジネスのプレゼンなど、「一瞬が勝負」という方に対して、このトレーニングをやっていくと、格段に「今この瞬間」への集中力が増していきます。

集中できないというのは、何かを考えているからです。集中しようと考えることで、さらに言葉が増えていきます。なので、さらに集中できないという悪循環に陥ってしまいます。

スポーツではどうプレーするか、プレゼンでは何を話すかにフォーカスするのではなく、「浮かんでくるものを受け取る」という姿勢でいることで、全身の力みは抜けていきます。

禅では「心は空、思考は雲」と言いますが、心という空に言葉という雲が勝手に浮かんできます。「無我」や「空」という思想はここからきています。

落ち着かせるキーワードを持っておく

また、執着の言葉を消す表現を持っておくのもいいと思います。

一流のアスリートやビジネスマンは自分を落ち着かせる言葉を持っています。

たとえば、プロゴルファー青木功さんの口癖「しゃあんめえ(仕方ない)」やイ・ボミさんがミスした時にキャディーとかけ合った「ケンチャナ(大丈夫)」というのは、ミスや失敗を許してあげる表現です。またお国の言葉や方言というのは、自然で気持ちを楽にしてくれます。

自分を安心させるのは、長い言葉ではなく、キーワードくらいがいいでしょう。

これらを唱えている時は、余計な考えは浮かびません。

禅には「身口意」という教えがありますが、身体と言葉と意識はつながっていて、いかに一致させるかが大事です。発した言葉で、身体はそういうふうに動くのです。

執着が増す避けたい言葉としては、「〇〇でなければダメ」「〇〇すべきだ」「〇〇してはいけない」「同じようにする」があります。あるいは、「数字を目標にして達成する」というのは、チームメンバーの納得と積極的な行動が起こりにくいです。数字というのは具体的一見すると分かりやすいようですが、数字は思考の言葉でありイメージしにくいのです。数字を達成するために、「こんな感じ」で取り組もうという共感が得られる表現にしていくかが求められます。「笑顔いっぱいで楽しもう」「ひとつひとつを丁寧に」「声かけし合って協力しよう」というキーワードをいっしょに考えるのもいいと思います。

周りがベストプレーできる人になる

また執着が増している時というのは、周りから声をかけにくいです。本人は気づいていない場合が多いのですが、言葉が増えていると、意識は内側に向いています。これは、周りと切れている状態になっています。

付き合いにくい人というのは、他人からだけではありません。周りが付き合いにくいというのは、実は自分とも付き合いにくいのです。

「あの人といっしょにプレーするとなぜかベストプレーができる」。「あの人といっしょに仕事するとやる気があがってくる。」という人は、オープンな心を持っていて、周りと調和しています。相手の話をよく聴けるので、自分の中の思考の声は少ないのです。また、周りへの配慮もうまいです。

言葉との付き合い方には、いろいろと工夫の余地があります。自分のあり方を見直す参考になれば幸いです。 詳しくは、週刊ゴルフダイジェストをご覧下さい。