グリーンが上りなので強く打たなければならない。こう考えると、パンチが入ってオーバーしたり、ストロークが早くなったり、力んでひっかけたりと、ミスにつながった経験はありませんか?

一方で、下りの早いラインではどうでしょうか?下りなので、弱く打たなければならない。こう考えると、怖くなって緩んだり、打ち切れずショートしたりします。

こうしたことはなぜ起こるのでしょうか?実は、人の脳は、言葉で表現されたものを体で表現するのが苦手なのです。その代表が「強く打つ」「弱く打つ」です。強く、弱くというのは、人が思考で作り出した言葉です。

では、どうすれば人の体は自然に動くのか。それは、イメージです。「こんな感じのスピードで転がって、カップに入る」ことをイメージするのです。多分、得意なラインの時には、自然にイメージ出来ているはずです。一方で苦手なラインのときはイメージができておらず、言葉で表現している可能性があります。言葉は説明には適しているのですが、説明を体は理解できません。体が理解できるのは、要は「こんな感じ」というザックリした感覚なのです。

先日、ある著名な同時通訳者と対談する機会がありました。この方の通訳は、非常に分かりやすいとさまざまな国際会議で引っ張りだこです。この通訳者の脳の構造はどのようになっているのでしょうか。英語から日本語に翻訳する時には、まず英語で話されたことをイメージ化するそうです。例えば、こんなことで困っているという話であれば、細かい一語一語を理解しようとするのではなく、この人は何を困っているのか?要は何が言いたいのかを理解するそうです。ニュアンスがイメージできたら、それを日本語にするのです。日本語から英語も同じ手順です。このとき、言葉で話されたものを一つずつ理解し、それを英語や日本語に直そうとすると同時通訳はまずできないそうです。

私自身英語で会話するときは、日本語でまず考えて、一文ずつ英語に直していました。でも、上手く転換できず、詰まることが何度もあったのです。この話をお聞きしてから、言葉で細かく理解しようとするのではなく、ニュアンスで捉えることに挑戦しました。すると、英語での会話が楽にスムースになりました。

ニュアンスとは、「こんな感じ」ということです。細かすぎるのはニュアンスではありません。ザックリしていていいのです。プレー中にぜひ、「こんな感じ」というニュアンスを作る訓練をしてみてください。このメンタルトレーニングできっと体の反応が変わってくるはずです。

言語化はあくまで私たちの感性の補助的な役割であり、本来の感性が濁っていては、どんなに言葉を駆使しても、それは本当の答えにはたどりつけません。強い、弱い以外にも、まだまだ言語化しすぎているプレーが多くあります。ぜひ、悩んだときこそ、言葉ではなく、「こんな感じ」をイメージするトレーニングをしてみてくださいね。