メンタルトレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト、今週のテーマは「練習場の一球目」です。

緊張をなくしたいという相談を選手から受けることがありますが、メンタルトレーニングは緊張しないことを練習するのではありません。高い目標を目指すほど緊張は高まります。目標と緊張はコインの表と裏のようなもの。緊張しないことを意識すると、やる気を失うか、かえって緊張を高めてしまいます。

緊張には慣れることが大事です。そのためには本番だけで緊張に対応しようとするのは難しい。普段の練習でいかに緊張した状況を作り出し、対応力を上げるか。

緊張する場面と言えば、出だしホールのドライバー。その日の最初のショットだけに力んだり、打ち急いだり、結果が気になってヘッドアップしてしまったりと苦労されている方も多いと思います。プロでも最初のホールのティーショットは緊張するものです。

では、一つ質問をさせてください。練習場の一球目は何を打ちますか?

練習場での一球目は本番の一球目を再現するチャンスです。ストレッチして体をほぐして、いつも通りルーティンをやって、一打目をドライバーで打ってみましょう。最初は上手く打てないかもしれません。それでOKです。それがあなたの一球目のドライバーの実力だと思ってください。まずは、本当の実力を知っておくことが大事です。そして、この練習のポイントは、ドライバーを続けて打たないことです。ミスをしたら、実際のコースで持つクラブを持ちましょう。それをしっかり方向を決めて打つ。きちんとリカバリーできるかどうか確認していくのです。

大事なのは、具体的にどんな緊張が起こるかです。プロとのレッスンでは、ラウンドをしながら緊張しているときの心と体の状態を具体的に理解することから始めます。プロのように多くのラウンドをしないアマチュアの方にお勧めなのが、練習場で1球ずつクラブを変えて打っていくことです。1球に対する真剣度が上がり、緊張感が高まります。そのときに結果よりも自分の体や心に何が起きているのかに焦点を当てて下さい。慣れてきたら、過去に回ったコースのスコアカードを準備して仮想のコースを練習場にイメージし、プレーしてみるのもお勧めです。

リズムがいつもより早くなる。腕に力が入る。フォローが伸びなくなる。こうした緊張したときに起こる自分の癖を詳しく知ることが大事です。何かを「変える」より前に「知る」ことです。本当の自分を知らないのに直そうとすると、見当違いな方向に進んでしまい、さらに混乱を招いてしまいます。

ここで注意していただきたいのは、長年の癖がその箇所に緊張のしこりとして蓄積されているので、緊張している箇所をいきなりなくそうとしないこと。お勧めは、一球打った後に、緊張した箇所を感じながら、目を閉じて10秒ほど呼吸することです。これを繰り返すことで、少しずつ緊張した箇所が柔らかくなっていきます。緊張を責めず、温かい目で見守ってやってください。