皆さんは、スイングをするときにどんなことを心掛けているでしょうか。リズム、正確性、インパクト、フォロー、フィニッシュなどさまざまだと思います。では、始動の瞬間はいかがですか?始動といってもテークバックではありません。もっと最初です。アドレスしてスイングをスタートする瞬間です。

調子がよいプロは、「地面に触れている足の裏にぐっと力が入った感じ」とか「下半身の微妙な動き」「左肩の始動」など最初の瞬間を感じられています。しかし、プロでも少し調子が落ちてきたり、ましてやアマチュアでこの始動の瞬間を感じられている人は少ないと思います。

ルーティンからはじまり、アドレスに入り、スイングをスタートするという一連の流れを一つ一つ大事に出来ているかが、プレーの精度に大きく影響しています。しかし、人は打つことに意識が偏りがちになります。すると、一つ一つのプロセスはおざなりになり、結果として打ち急いだり、力んだりということが起こるのです。

大事にしてほしいのが、「ほんの少し」から始動するということです。皆さんはいきなりクラブを上げようとしたり、体を大きく動かしたりしていませんか。これでは「粗い」のです。粗さの逆は「丁寧」。ではゴルフで丁寧に始動するとはどういうことか。

一つ実験をしてみましょう。コップを準備して、それを持ちあげてみてください。いかがでしたか?コップの重さは感じましたか。コップを持ち上げたときに、重さを感じられたという人は、始動を感じられています。これが丁寧に持つということです。しかし、普段の生活でコップの重さを感じながら持つ人はほとんどいません。それは、コップの重さを予想して取っているからです。人は、過去の経験からこれくらいだろうと無意識に予想する能力を持っています。もちろん、これは生きる上で大事な能力の一つですが、ただ予想する力に頼りすぎてしまうと、一つ一つの行動は慣れになり、雑になっていきます。これでは残念ながら「粗い」のです。

禅の修行では、歩く、食べる、掃除する、寝る、すべての行いは禅とされています。雑な行いはすぐに見抜かれ、厳しく叱責されます。私のような凡人には、なかなか難しい境地ですが、始動を心がけることで、以前より丁寧さが出てきたように感じます。

クラブやパターを握ったときに重さを感じていますか。クラブを持つときに、重さを感じるには、ゆっくりと持つ必要があります。打つ前から結果に心がいっていたり、慣れている状態では、クラブを持つという行為は、雑になります。雑な心は、雑なショットになっていきます。グリップの感触、温度、固さなどを感じられると、心が落ち着いてきます。

真のフルパワーを発揮しようと思えば、いかに最初を最小限の力から始められるか、なのです。禅でいえば、これは静中の動。静けさがあるから、少しの動を敏感に感じられます。そしてパワーは振り子のように、最初は小さくゆっくりとはじまり、少しずつ速く大きくなっていきます。ぜひ、「ほんの少し」から始めてみて下さいね。