私たちは、スポーツでもビジネスでも、
悪いところがあると、すぐに直そうとします。
しかし、直そうとすればするほど、うまくいかなくなった経験はありませんか?

直そうとすると悪いところが気になって力が入ったり、
他の部分がうまくいかなくなってバランスを崩したり、
リズムが悪くなったりするのです。

なぜ直そうとすると、逆にうまくいかなくなるのか?

それは、直す前に、私たちがすべきことがあるからです。

それは、「知る」ことです。
「ただ分かる」ことです。

メンタルトレーニングをしていても、選手達も最初はよく分からないようです。

ゴルフでスイングを直そうとする前に「知る」、「分かる」とは?

自分がどんなスイングをしているのか?
どこに力が入っているのか?
フォローは出ているのか?
色々なところに注意を向けて意識することです。

このとき大事なのは、ジャッジしたり、変えようとしたりしないことです。

ある男子プロゴルファーは、肝心な場面になると振りきれないことが課題でした。
緊張するとクラブが走らなくなるのです。

そして、練習では思い切り振るために
スイングを変えたり、体の使い方を変えたり、
色々な修正を試みていました。

しかし、振りきろうと修正すればするほど
今度はボールが曲がり始め、
コントロールが効かなくなるという問題が発生しました。
直そうとすればするほど、
本来のスイングが遠ざかっていったのです。

メンタルトレーニングでは、まず「知る」ことから始めました。
ボールを打ちながら、ただ、自分がどんなスイングをしているのか
観察するのです。

選手にどんなスイングをしているのか聞いたところ、
トップまでは何となく覚えているものの、
自分がどんな感覚で打っているのか、ほとんど分かりませんでした。

素振りの時はクラブの重みも体の感覚も分かるのに、
なぜ実際にボールを打つときには
そうした感覚がなくなるのか?

それには色々な理由が考えられます。
選手によって違いがあるのですが、
ここでは多く見られる事例を紹介します。

まずは、体感覚以外の感覚に注意がいっているケースです。

メルマガを読んでいる皆さんに、ここで1つお聞きします。
5秒前にどんな音がしていましたか?

これに答えられた人はすごい感覚の持ち主です。
きっと、緊張した場面でも力を発揮できているのではないでしょうか。

ほとんどの人は、文章を読むという行為をしていて、
視覚という感覚に焦点を当てている場合、
他の感覚、聴覚や触覚、臭覚、味覚などには
気づかないようにできています。

これは思考している場合も同じです。
スイングの修正を考えながらスイングすると、
脳は思考することで一生懸命になり、感覚まで気が回りません。

また、過去のミスをひきずっていたり、
スコアや順位など未来の結果を考えていたりするときも、
思考が頭を占めている状態です。

最もスイングがスムースにいかなくなるのは、
思考が頭を占めているときです。

頭で考えている状態のときは、
今この瞬間を感じてはいません。
ということは、今を「知る」ことはできません。

今を「知る」ためには、
感じることに焦点を合わせる必要があります。
そのためには、視覚、聴覚、触覚、体感覚などを使って
今起きていることを感じることが必要です。

特にゴルフやスポーツでは、触覚と体感覚が重要です。
視覚だけではないのです。

多くのスポーツ選手が視覚こそ重要だと勘違いしています。
だから、見すぎてしまうのです。
そんなに見ようと意識しなくても、十分に見ているのです。

本来のリズムや体の繊細なバランスを調和させるのは、
体感覚なのです。

先ほど述べたように、1つの感覚に集中してしまうと
そのほかの感覚が感じられなくなってしまうので、注意が必要です。

普段、素振りの時は、ボールを見つめているということはありません。
だから、ヘッドの感覚や体感覚に気づけるのです。

そこにボールが登場すると「見る」という視覚に焦点がいきます。
それでも、適度に見ているときには
まだスイングを感じられるのですが、
不安になってくると人は生存本能から
よく見ようとする傾向があります。

すると、ボールを見ることばかりに意識がいって、
肝心の体感覚がなくなってしまうのです。

この選手はこれに気づいたことで、まず直すことをやめて、
「知る」ことから始めました。

ただ、自分がどんなスイングをしているかを「知る」。
身体の動きを感じる。
フォロースルーもただ、どうなっているのか、
自分の動きを「知る」ことだけに意識を向けました。

トップの位置を直そうとしていたので、
トップにばかり意識がいって、
トップ以降の自分のスイングを感じていなかったのです。

また、スイングを修正中で自信がなく、
ボールの行方が気になることで
フォロースルーをしているときには、
すでにボールの行方の方に気持ちがいっていたのです。
すると、フィニッシュまで振りきれていない自分に気づきました。

ここで大事なことは、ただ「知る」ということだけです。
すべて体の動きに任せて観察するだけです。
直そうとしないことです。

すると、自分のフォローまで意識を向けることで
クラブヘッドがどう動いているか、
また自分がどんなスイングをしているのかが
分かるようになってきました。

これを繰り返す中で、自分の身体が勝手に修正してくれ始めました。
1ラウンドを終えるころには、
気が付けばフィニッシュまで振りきれるようになっていたのです。

人は「コントロール思考」を持つと、動きを頭で抑え込もうとします。
それが、逆に体や心が本来持っている能力を妨げてしまうのです。

能動的な思考が悪いわけではありません。
練習の段階で、さらにいいスイングやリズムを追求していくことは、もちろん必要です。
ただ、これは練習だから有効なのです。

本番では、体と心の本能に委ねるしかないのです。
それが「知る」、「分かる」ということです。