「天に貯金する」

これはお茶の師匠からいただいた言葉です。
この師匠は、さまざまな苦労をしながら家族を育て、
経営者として従業員を育て、
ビジネスを引退された今はお茶を通して
人を育てておられます。

先生の人を包み込む温かい人柄のおかげで、
ここまでお茶の修行を続けてこられたと思います。
お茶だけではなく、毎回さまざまな人生の教訓を教えてくださるのも、
稽古に通う楽しみの一つになっています。

このような温かい人柄は元々なのだろうかとも思っていましたが、
実はこれまでご主人の死、事業での危機、
ご自身も死の淵をさまよう病気を経験されてきたそうです。

そして、昔人生で八方ふさがりの状況になったときのことを
話してくださいました。

すべて手を尽くしたが、もう駄目だ。
目の前はまさに真っ暗。

そのとき、ふと空を見上げたそうです。

そこには、光が見えたのです。
すべてがふさがっていると思った人生で、
まだ天だけは見捨てずにいてくれる。
そのことに気づいたおかげで、困難を乗り越えられたそうです。

その時、天に貯金しようと決意されたのです。

私たちは、「利己」から始まります。
それは自分の利益を求め、自分のために頑張る。
多分それだけでは、自分だけがよければよいと傲慢になります。
損得で測ってばかりだと人の心が離れたりと、
どこかで限界がやってきます。

そこで、次に「利他」の心の必要性を感じます。
人のために尽くす。
まず自分ではなく、人のことを考える。

こうして、エゴだらけだったのが、
少しずつ周りのことを考え、
思いやりの心を持てるようになっていきます。

しかし、先生曰く、
人のためでは、どこかで返してほしいと思う。
「こんなにしてあげているのに」という、
求める心が出てしまうそうです。

その時、まさに私は利他のステージで挑戦していました。
確かに以前よりは心が大きくなったように思えていましたが、
上手くいかない時には、やった見返りを求める心が大きくなり、
相手を責めたり、焦りが湧いてきたりします。

だからこそ、天に貯金するという心を持つことが
大事なのではないでしょうか。

すべての行いは天につながる。
少しでも天に貯金できるように行動する。
逆にいえば、いつも天が自分を見守ってくれているのです。

これは、天に生かされているという感覚かもしれません。

いわゆる自己実現、自分で頑張ること、
自分が頑張って手に入れることには、限界があります。

しかし、天に貯金することは無限です。
見返りを求めることもありません。

私はアメリカでの挑戦を、
天への貯金だと考えています。

できるだけの準備と努力をして、あとは天に委ねる。
そう思うと「あとはよろしくお願いします」という気持ちで、
すごく気が楽になりますし、思い切った決断もできます。

そして、そんな気持ちでいると、いいご縁がやってくるのです。
というよりも、いいご縁に気づけるようになったのかもしれません。

人には平等に機会が与えられています。
ただ、それに気づけるかどうか。

見える目を持っておかないと、
すべての縁は通り過ぎてしまいます。

損得の利己の心では見えないご縁があります。
利他の心でいいご縁が見えるようになり、
さらに天に貯金することで、
すべてを信じて委ねることができるのかもしれません。

皆さんも、天に貯金を始めてみませんか?