今回は坐禅法ついて、ご紹介します。宗派によってさまざまな坐禅法がある中で、選手たちとのメンタルトレーニングで好評を得た気楽に取り組める坐禅法をご紹介します。場所は畳の上でもいいですし、椅子でも大丈夫です。

(1)坐禅の基本は姿勢です。頭のつむじ付近の髪の毛を上に引っ張ると、背筋が伸びます。また、前後左右に体を揺らすことで、真っ直ぐな位置を確認できます。坐禅中は、だんだん背中が丸くなるので、そのたびに姿勢を整えましょう。

(2)次に目を閉じて、お腹にある空気を吐ききります。吐ききったら、数秒止めて、自然に吸いはじめるのを待ちましょう。これを数回行います。

(3)2メートルほど先に目を向けます。このとき、一点を見ようとすると目に力が入ります。まぶたを少し落とした半眼という状態で、ただ「見えている」ことを感じましょう。それから、周りの音、そして椅子に当たっているお尻の感覚などを感じていきます。

(4)次に、呼吸に意識を向けましょう。空気が鼻から入ってくる感覚、それが体の中に入っていって、再び鼻から出ていく。無理に深い呼吸をしようとすると力が入ります。ただ、呼吸している体の感覚を感じましょう。おそらく途中でいろいろな考えが浮かんだり、眠くなったりすると思います。それをダメだと責めるのではなく、ただそれに気づき、静かに今この瞬間の呼吸に戻りましょう。意識がどこかに飛ぶのが問題ではなく、それに早く気づくことが大事なのです。

(5)最後に受け入れる心で呼吸しましょう。周りの空気、雑音、浮かんでくる考え、自分の体、体の痛み、違和感、すべてを受け入れます。なかなか受け入れられないかもしれません。その時は、受け入れられない自分を受け入れましょう。どこまでも受け入れる心を広げていきます。

これはあくまで基本形であり、すべてを順番通りに行う必要はありません。(1)の姿勢以外は時間や状況に合わせて、組み替えてください。もっといろいろ試してみたい方は「数息観」という息を数える呼吸法をはじめ、様々な坐禅法がありますので、ネットなどで調べてみてください。

そして、なかなか坐る時間がないという、忙しいみなさんにお勧めしたいのが、「トイレ坐禅」です。朝のトイレ、会社でのトイレ、ラウンド前のトイレで坐禅をするのです。トイレにいると心が落ち着くという方もいると思いますが、あの周りから閉ざされた狭い空間は、実は坐禅に向いています。曹洞禅では、壁に向かって坐禅を行いますが、あれからヒントを得ました。お寺の坐禅では、一回に20分から40分ほど坐ります。もちろんそれが出来ればいいですが、短い時間でいいので、日々何回でも行う方が、世俗で生きる私たちには合っていると思います。難しくて止めてしまうよりは、何とか続ける練習方法を工夫することも禅の修行です。

トイレ坐禅などは、不謹慎だと仏教関係者からはお叱りを受けそうです。ただ私の師匠は、「正解不正解を考えることで、坐禅に入りづらくなる。とにかく思いついたら何でもいろいろやってみなさい。やってみて合うものがあなたの答えなのだから」といつも言われます。正当な坐禅をそのまま仕事やスポーツのトレーニングに当てはめるのは、なかなか難しいと感じています。いかに日々の忙しさの中で「静かに坐る」時間を取り入れるか。いろいろ試行錯誤しながら楽しんでやっていけるといいですね。