メンタルトレーニングをやっていると、ゆったりと振っているのに、すごく飛ぶというゴルファーがいます。「ゆったり」振りたいというのはゴルファー共通の願いではないでしょうか。ちなみに私も「ゆったり」のスウィングに憧れるゴルファーの1人です。

しかし、実際にゆったりと振ろうとするとなかなか難しいですよね。タイミングがズレてしまった。「ゆったり」が「ゆっくり」になってしまって、距離が落ちてしまった。そして、結局元のスウィングの方がマシだという経験をお持ちのゴルファーも多いのではないでしょうか。

選手へのメンタルトレーニングをやっていると、ゆったり振ろうとすると、ゆったりは生まれないことが分かってきました。それは、「ゆったり」というリズムが生まれるメカニズムにあります。

ちなみにゆったりというのは、どういう状態と言えるのでしょうか。一例を挙げてみました。

・スウィングが大きい
・トップにタメがある
・ゆっくりと振っているように見える
・クラブが走っている
・余裕がある
・フォローがしっかり出ている
・力みがなくリラックスしている
・リズムが一定

ゆったりというのは、あくまで結果です。肩をゆっくり回しても、クラブをゆっくり上げてもそれだけでは「ゆったり」にはなりません。

「ゆったり」とは、身体のそれぞれのパーツとクラブの動きが上手く連動している状態です。上手くつながることで、そこに余裕が生まれます。余裕とはタメであり、ふわっと浮いたような無重力状態とも言えます。

一方で、「ゆったりスウィング」の逆は「ギッコンバッタンスウィング」です。では、ギッコンバッタンとはどのような状態でしょうか。

・力んでいる
・スウィングがスムースでない
・打ち急いでいる
・トップにタメがない
・リズムがバラバラ

プロでも、普段の練習では、ゆったりと打てているのに、緊張した場面では、スウィングがぎこちなくなることはよくあります。「ゆったりスウィング」には、かなり心の状態が影響しているといえます。

ゆったりスウィングを目指すために、メンタル的には何をトレーニングしていけばよいのか。

ちなみに坐禅では呼吸を観察します。いろいろなスポーツのアスリートたちと坐禅をやっていくと、最初はかなり呼吸が苦しくなるそうです。吐いて、吸うということを感じる中で、どうしても呼吸を長く深くしようとしたり、一定にしようとしたり、無意識にコントロールしようとするのです。まずは、人はどこか無意識にコントロールしようとする心の癖を持っていることを理解しておくことが大事です。

そして、これはギッコンバッタンな呼吸といえます。ただ面白いことに、もともと呼吸というのはゆったりしているのです。だから、坐禅は本来のゆったりした呼吸にいかに戻っていくかを修行していくのです。

そのために、禅の師匠は「間を感じることの大事さ」を説かれます。吸って、吐いてだけを意識していると必ずぎこちなくなります。吸って、吐くという動きの間に、必ず止まる瞬間があります。呼吸のタメといってもいいかもしれません。この「間」を感じることで、自然に呼吸は滑らかになっていくのです。ぜひ皆さんも、試してみてください。

禅においては、いろいろな場面で「間」ということを大事にします。それは、人間の心はどちらかに偏るからです。偏った心をニュートラルに戻すために、間を大事にするのです。

スポーツで言えば、身体の使い方は上半身か下半身に偏りがちです。いかに「間」を大事にするか。

週刊ゴルフダイジェストに連載中のメンタルトレーニングのコラム「禅の境地へ」第156回のテーマは、「ギッコンバッタンのスウィングは肚を意識することで防げる」です。脱ギッコンバッタンスウィングを目指したい方はぜひご覧ください。