スポーツのメンタルトレーニングと禅 静かな心とは 頑張る集中から自然な集中へ

「静かな心」というと、どういう状態を思い浮かべるでしょうか?

・何も考えていない
・心がザワザワしていない
・目の前のことに集中出来ている
・不安や焦りがない
・周りに惑わされていない

実は、メンタルトレーニングをしていても「静かな心」を誤解しているスポーツ選手が多いです。

あるプロゴルファーは坐禅が苦手でした。「坐っていると、いろいろな考えが浮かんできて、呼吸に集中しようとしても、すぐ他のことに意識が飛んでしまいます。逆に心がザワザワします。どうすれば静かな心になれるのでしょうか」と質問を受けました。

実は、このプロが気づいていることがまさに坐禅なのですが、恐らく静かな心というものに、いろいろな固定概念があるので、自分の状態を間違っているように感じるのです。私自身も坐禅をはじめた当初は、坐ることが苦しくて仕方がありませんでした。それをお坊さんにお聞きしても、「まあ、坐っていればいつか分かりますよ」と笑いながら言われるだけ。

今から考えると、その通りなのですが、アスリートはお坊さんになるわけではないので、これではあまりにも不親切なように感じます。せっかく坐禅をやってみようというアスリートのためには、もっとさまざまな方向からのアプローチがあっていいと思います。

静かな心と手に入れたいというのは、ゴルフだけではなく、どのスポーツ選手にとっても共通の願いです。ただ、これまでのスポーツの指導では、一つのことに集中することで、他の余計な物事を考えないことが強調されているように思います。一つに心を向けるという集中法は効果がありますが短期的です。これは頑張った集中だからです。

「心が静か」という状態は、何も心にない状態ではありません。

坐禅とは、何かが身体や心に起こっていて、ただその起こっていることをただ感じているだけの状態です。

では、まず次の状態を一分ほど、ただ感じてみましょう。

・息が出ていることが起こっている
・息が入っていることが起こっている

どうでしょうか。心はどんな感じになっていますか。あるアスリートは、「心がフラットになってきた感じがします」と表現していました。荒れていた波が、少しずつフラットになってくる感じかもしれませんね。

フラットになってくると、逆にいろいろなことに気づくようになります。見えている景色、聞こえてくる音、匂い、温度などの肌感覚、そして自分の中に起こっているさまざまな思考や感情です。いろいろなことに気づくことが人によっては、ザワザワしていると感じるのかもしれません。それでOKです。ザワザワしているなあと違和感を感じていることをただ理解してあげましょう。

ここで大事なことは、一つのことに囚われるのではなく、次々に起こっていることにただ気づき、そのままにしておくことです。放っておくと、次々にいろいろなことが起こってきます。好きな感覚もあれば嫌いな感覚もあるでしょう。それもすべて「今、自分の中にそんなことがおきているのだなあ」と理解するだけで流していきます。

禅では「無心」が肝とされていますが、これは何も考えないということではありません。ただ、起こってくることに気づく。これを続けていく。師匠の老師は、「無心とは川の流れのようなもの」と表現されていました。

静かに川の流れを見ていると、心が穏やかになっていきませんか。その状態が自分の中でも起こっているのです。

週刊ゴルフダイジェストに連載中のメンタルトレーニングのコラム「禅の境地へ」第157回のテーマは、「無口になるメンタルトレーニング」です。ショットの前後に無口になることで、自分のスウィングが見えてきます。

静かな心を手に入れたい方はぜひご覧ください。

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ